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すきもの

1:匿名 :

2020/01/11 (Sat) 19:21:29

竹林に紛れた鮮やかな緑の紅葉が日に透けている。飛石が続く小路を慣れない足捌きで歩み、庵へ向かう。
 着物なんて、成人式以来だから、十年とまではいわずとも、ずいぶん久しぶりだ。空で数えてみて小夜子はぞっとした。
 もうすぐ二十代が終わる。光陰矢の如し。きっと四十手前でも同じことを思うのだろう。小さく頭を振り咳払いをした。
 薄浅黄色の着物は祖母のを借りた。いつもと違う自分というのも、なかなかいいものだ。機会をくれた風変わりな知人のもとへ急いだ。
 低い入口を潜るようにして中に入ると、すでに席が整っていた。
「遅くなっちゃった。作法もわからないけど、普通に入っちゃっていいの?」
「どうせ俺ら二人だ。まァ、いいじゃねえか。気にすんな」
 備長炭染めの紬に、白地に黒の織り模様が入った帯を締めた男は、いつもよりさらに精悍に映る。
「茶道を嗜むなんて知らなかった。意外」
 いいながら男の向かいにある座布団に正座する。
「たまにはいいだろ、こういうのもさ」
 男は釜の湯をすくい、濃茶を練る。
 数分後、溶けたアイスクリームのようなとろりとした鮮烈な真緑の液体が、黒いごつごつした茶碗の中にある。
「この茶碗高いの?」
「お前の年収くらいかな」
「はあぁ!?」
 小夜子の反応に男は肩をすくめた。
「品がねえな」
「あんたに言われたくない。うえー。苦そう」
「うるせえ。四の五の言ってねえで飲め」
 予想に反して、苦味はない。旨みと甘味がとろとろと舌に絡みつく。
 こくりと飲み下す。
「美味しい」
 小夜子が呟くと、「だろ?」と男はにやりと笑った。
 ずくん、と体が疼く。一服盛られたのだろうか。舌に残る濃密な甘味はさてさて。
 
2:匿名 :

2020/01/12 (Sun) 00:26:10

かんなさん
テンポと〆の一文から、たぶん
3:匿名 :

2020/01/12 (Sun) 00:27:49

かんなさん、かなぁ
4:匿名 :

2020/01/12 (Sun) 00:29:03

オキさんと迷いつつ かんなさん。
着物詳しそう。
5:匿名 :

2020/01/12 (Sun) 00:38:20

オキさん……か?
6:匿名 :

2020/01/12 (Sun) 00:40:29

カンナさん一択(笑)
7:匿名 :

2020/01/12 (Sun) 00:49:25

かんなさんで
「ねえな」みたいな口調好きなイメージ
8:匿名 :

2020/01/12 (Sun) 00:58:55

おきさん!
9:匿名 :

2020/01/12 (Sun) 08:52:27

かんなさん擬態のポルンさん
10:匿名 :

2020/01/12 (Sun) 17:53:37

かんなさん、かな
11:匿名 :

2020/01/13 (Mon) 19:40:12

お二人の関係が気になります…!
12:森野きの子 :

2020/01/15 (Wed) 15:11:16

テーマの「すき」を見て、即座に浮かんだのが、最近マイブームの着物男性。派手な着物ではない方が色気やばい!というわけで。
備長炭染めの結城紬、白地に黒模様の博多織の帯、と書きたかったんですが、バレそうなのでやめました。
上品な趣味と所作と乱暴気味なざっくばらんさのギャップ萌えを描けたらいいなあと。
着物と茶道に詳しくないので、色々端折った超SSとなりました。
誰にも当てられなかったのは覆面作家冥利に尽きます。
逃げ切った詐欺師の気分です(笑)
13:燠 天晴 :

2020/01/15 (Wed) 20:23:48

す、すごい綺麗な短篇ー!すてきでした。そして全然わかりませんでした……(>_<)

きの子さんの作品は、私のなかでは現代、超カッコイイ感じ、荒れ狂ってると見せてやさしい!というイメージでした。文体をまだおぼえていなかったのですが、(*'▽')ぱあああ! もうすぐ本が発売だから、きの子先生マニアになれるチャンスですね!

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